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動物の医学 2017年12月

猫の回虫症

猫回虫症

回虫症とは、線虫に属する寄生虫の一種である回虫によって引き起こされる病気です。
回虫はヒトやイヌ、ネコなど多くの哺乳類の小腸に寄生する動物です。
猫に寄生する回虫はネコ回虫がほとんどで稀にイヌ小回虫も寄生します。

体内に侵入した回虫の卵は、小腸内で孵化して壁を突き破り、血管内を移動しながら肺に到達します。
そこで幼虫が成長した後、気管支や食道に移動し、再び飲み込まれることで腸管内に戻りそこで成虫になります

成虫になった回虫は宿主から栄養を盗み1日にたくさんの卵を産みます。
卵は便に紛れ体外に出ると再び宿主に取り込まれるのを待ちます。
体外に出たばかりの卵は感染力がありませんが2週間ほどで発育し感染できる成熟卵になります。 
成熟卵は砂や土の中で長い間生き続けることができます。
この卵を猫が食べたり成熟卵を食べたネズミや鳥を食べたりすることでも感染します。

その他母猫が回虫に寄生されていた場合母乳から子猫への感染が起こります。

症状   食欲不振 下痢、嘔吐(回虫も吐き出すこともあります) 
    腹痛 お腹のふくらみ 咳 体重減少 貧血 毛艶の悪化 子猫の発育不良

治療   治療としては駆虫薬を使用し体内の寄生虫を駆除します。


人獣共通感染症    猫回虫は人にも感染します。

免疫が弱い人が感染してしまうと虫卵が腸で孵化し発熱、咳、喘息やまれに視力障害など重症化する場合もあります。

感染は何らかの形で虫卵を口にしてしまった場合に起こります。
土を触った後の手洗いが不十分だったり、感染している猫に顔をなめられたりすることでも感染の可能性があります。




会陰ヘルニア

会陰ヘルニア

会陰ヘルニアとは会陰部の筋肉が分離し、腸や膀胱などのお腹の中の臓器が出てきてしまうことでお尻周りが腫れてきてしまう疾患です。
筋肉の隙間から出てきた臓器を包んでいる膜はヘルニア嚢といいます。

会陰ヘルニアはワンちゃんで多く、特に去勢していない男の子でよく見られます。

症状としては、主に排便困難や排尿困難、しぶりなどがみられることがあります。
ヘルニア嚢内に脂肪組織だけが出てきている場合、お尻周りの腫れだけで特に症状が出ないこともありますが、
腸や膀胱が出てきている場合、そこでねじれてしまったりするとその部位で腸が壊死してしまったり、尿が出ずに尿毒症のような症状が出てしまう可能性もあります。

 治療としては、便秘を解消するために便軟化剤を用いたり、膀胱に針を刺したりカテーテルを用いることで尿を出してあげるなど、
症状に対する対症療法を行うことも可能ですが 長期的に管理することは難しく、根本的な治療を行うには手術で整復する必要があります。

本院では基本的に手術を行う際には病変側だけではなく、反対側もヘルニアの要因がないか切開して確認しています。
そのため、術後は下の写真の赤線のように青マルで囲まれた肛門の両側に傷口が見られます。

また会陰ヘルニアの手術を行う際には、未去勢の男の子の場合は再発率を下げるためにも去勢手術を同時に行うことが推奨されています。

 最近お尻周りが腫れてきたな、など何か気になることがあれば会陰ヘルニアの可能性もあるので早めに受診することをおすすめします。




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